線と束

短歌

短歌

目覚めたら大体季節は変わってて、大体声は痛くなくなってる(そう願ってる)

今朝摘んだトマトを全部食べてくれ、そんで殺して僕の月日も

どれくらいしたい?どれくらいしたい?どれくらいしたい?どれくらいしたい?どれくらいしたい?

あまりにも紛れもないな 子供時分、僕らの首を絞めこんだ跡

君は嫌いなのそれとも嫌われたいの、野暮なんて、それが大人ってやつなのかな

腕は一応暖かいけど笑えない、誰にどれがどれくらい届くの

文脈で記憶を濡らす どれがサインでどれがフリなんだよ、甘いかな

サーカル、僕の三割は既に落ちてる 残してくれよ あるいは決して

痛い人の隣で僕は痛いだけ どうしたらここに夜が来るのかな

夜酔のなかで一人で歌えるのはさ、非常に下らぬ線と束

(森は拳銃でできている) ブルーカラーが欲を浴び、車輪を持つ不正な鳥が重く羽ばたく

笑うほど傷口に浮かんできた歌が、書き留めるより前に溶けてゆく

夜に詠む独り言 この世とは陶酔であり、また孤独であり、また

シフト表浮かぶ本性 君が青、僕らが秋で、緑が詐欺だ

浦に垂る夕緑は空かガラスか、会話もせず、鉄橋を走る、downyのかかる

放課後が梅雨を伝う、知るかよ、通信の止まってる音がする

レシートを片付けた それは開くということであり、夢のないことでもある

淵酔を浴びろ、お前を状況につなぎとめるための悲恋を歌うな!

わからないまま回転体を転げる そっちの月面には誰も待ってない

歩道とは眠る勝者と死者の差分 それで歴史になれるなんてな

豪族の血糊は赤い お前がまだ有罪だった頃の話だ

物語る側の人とはこれほどに解像度の高い日々を生きるのか

逃げもせず、耳と目を閉じ、昨日より差し伸べられた夕暮れをみる

人間に表現できてしまうにはあまりに大きな人の出来事

回転が速すぎて僕ら熱圏に磔いたまま近づけぬまま

孤独を吸い思いをなすか 思いを吸い孤独をなすか 一人で選べ

秘密なら日陰で話せ さもなくば全てが白む真昼の浜で

動脈と静脈でなるループ間で脈拍を共有する方法

水園で故人を握る夢を打つ飛沫は以前の夢よりも冷たい

ミニマルな表明をやがて繰り返す 気持ちを体に擦り込むように