線と束

短歌

短歌

それはまた致し方のないことなのだけどひとりでに得心してしまわないで

本当は語りもあえず触れれない清く正しい距離感よりは

全身で苦しんだその苦しみを一人で弄ぶギターみたいに

出来事の全てがフローに見えるのはなべて僕との相対論です

白昼の盲目のなか書く文字は僕のためでなくあなたのでもない

憎き人よ来て 第二者の見てる中 天使の路上で刺し違えよう

これは僕とあいつとあいつとあいつらをこれは裏切り これは裏切り

黴と攪拌するルーチンを飲み下す、これは、これは安寧を欺く薬

おとぎ話を追うことをせず、けれど迎合とは別個の感情

無言電話には無言しか返らずに、だるいな、夜がな手招きをする

他人を救う罪で焼かれるくらいなら聖者になんてなることないよ

彼岸とは仲良く笑いたいだけなのに、雑誌には、それを打ち勝つ方法ばかり

静寂を逃れ勝ち得た静寂をどれだけ眠れど静寂は来ずまた人は来る

行間に眠れる人を囁くのは きっと歌をするよりずっと大切なこと

入るでなく出ずるでもなく暗弱をのたうち回るエレクトリック

この唇のかける情のどれ程が無情の結果産まれた空想

一方的に謎ばかり それで分かり合えなくたっていい日が来るんだろう

あなたには距離をわかって欲しい、僕はあなたの距離の意味が知りたい

くるぶしにうそなきがはねる 今は下らない慰め、それが必要

喪失をするための風景を求めて 京都にも高架下くらいある

糖類と健康法と恋を売り、人はこの世を浪費している

気が散って三回分の夜が来る 夜が明けて夜が明けても夜が

何もない空にフォーカスが当たっちまう、終わりの半月、僕だけのアメリカ

この世の、全ては、グリーンの、糸でできて、いたのに、今では、黄色くて光もしない

胸に凭れて見えるのは銀色のスピード、大きくて、高く、遠い、速い!

窓の霊は、殺さず、間違いをさせて、泣く俺を笑う陰湿な俺だ

君に聞かす一つの鼓動に童貞と春の亡霊とが重なっている

失敗は一度でなくて、永遠に失い続ける亡霊のこと

語彙を吸う、六時、蜘蛛の子、BNE、時雨の光景、壊れた公園

全て選択した色で光るとき 既に岐路は過ぎた、帰路は既に過ぎた