線と束

短歌

2016-06-27から1日間の記事一覧

無言電話には無言しか返らずに、だるいな、夜がな手招きをする

他人を救う罪で焼かれるくらいなら聖者になんてなることないよ

彼岸とは仲良く笑いたいだけなのに、雑誌には、それを打ち勝つ方法ばかり

静寂を逃れ勝ち得た静寂をどれだけ眠れど静寂は来ずまた人は来る

行間に眠れる人を囁くのは きっと歌をするよりずっと大切なこと

入るでなく出ずるでもなく暗弱をのたうち回るエレクトリック

この唇のかける情のどれ程が無情の結果産まれた空想

一方的に謎ばかり それで分かり合えなくたっていい日が来るんだろう

あなたには距離をわかって欲しい、僕はあなたの距離の意味が知りたい

くるぶしにうそなきがはねる 今は下らない慰め、それが必要

喪失をするための風景を求めて 京都にも高架下くらいある

糖類と健康法と恋を売り、人はこの世を浪費している

気が散って三回分の夜が来る 夜が明けて夜が明けても夜が

何もない空にフォーカスが当たっちまう、終わりの半月、僕だけのアメリカ

この世の、全ては、グリーンの、糸でできて、いたのに、今では、黄色くて光もしない

胸に凭れて見えるのは銀色のスピード、大きくて、高く、遠い、速い!

窓の霊は、殺さず、間違いをさせて、泣く俺を笑う陰湿な俺だ

君に聞かす一つの鼓動に童貞と春の亡霊とが重なっている

失敗は一度でなくて、永遠に失い続ける亡霊のこと