線と束

短歌

短歌

本来は我ら不要な副作用 言わなくたって行かせてくれる

願っては駄目 妖精は美しいけど自滅していくものだから

夕焼けと酸素との間の白色によく似た声でまだ見ぬ君は

DRY この世で僕は祭を祭り 夜毎わずかなせせらぎとなる

今日はまだ思い出の範疇 夢を見る夢を、見ている夢を、見ている

千人の空から吊るす千の鎖 本当を一つ教えてくれよ

砂で洗う帰りのバス 泣き声もかさつくような揺れ方ですが

なめらかな生きていき方 悲しみは言ってくれない 眼鏡を外す

蝉音とエレクトロニカ真下から蝉の姿勢で寝言をしてる

十二時は夏にだけある 冴え方も伝わる息もすぐに忘れる

月でかつ海だから月の海では君はどれだけ軽いだろうな

改札の電光広告(ここでパン)アウトしていく 薄くなっていく

枯れ枝を拾い上げるそのアニメーションの一呼吸にそれはジェンダー

この海と君の雨とで、どちらがより意味なんだろう?

3番線知らない冬のにおいがする(誰かの幼年期に隠される)

どこにでもある他者として俺たちは戯画の血筋に流れていきます

青灯を瞑ってことば焼べましょう 我ら夜的論理のしもべ

この先は崖 でも道は木漏れ日に溶けてはれてる、だから行こうか

永劫にワイン煮詰める酒の香に華やぐ顔を見つめていたり

思い出と同じ場所の知らない場所でまた来るよって付ける傷跡

満月が溶けてたまる やさしい棘で眠らせて君はやさしくしてくれる

時計が 反響する 交差点のアメーバ の一つ の気持ちを知る

神性を取り戻せ 捻じ曲げてしまえ 古き悪きそのままの時代へ

夢で君は空を表す色であり全てを含む補集合

その伽藍崩して形而思い出して色々透るさやかなビーズ

空気が起動して 導いてくれますように 磁力のままでこの街へ

僕たちの味覚は低劣であり、胃は駄菓子によって傷害されている (萩原朔太郎「詩の原理」について)

情けなくて死ぬには足りない男性のしかしこそばい情けなるもの

霊として生まれた損ねた回折ですから、不協和音とよく協和する

密約をしたはずだけど蝉静もしかしたらまだかもしれない